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2020.10.16 Fri

コロナ禍の中での学びを、学生の強みに。

中部学院大学短期大学部(岐阜県)にてお勤めの小室明久先生(助教)へのインタビュー。

岐阜県の”いま”

小田:本日はよろしくお願いいたします。まずはじめに自己紹介をお願いできますか。

小室先生:現在、中部学院大学短期大学部(岐阜県)の幼児教育学科で助教をしております小室明久です。大学では、保育士・幼稚園の教諭になりたい短大生を対象として、造形・美術・図画工作の指導を主に担当しております。

小田:小室先生は岐阜県に移られて1年半とのこと。岐阜県の全体的な印象を教えてください。

小室先生:個人的な感想に留まりますが、岐阜県はとても広く、例えば観光地として有名な飛騨地域と、名古屋に近い岐阜地域では印象が異なります。また、同じ県内でも地域によって言葉やイントネーションなどが異なっています。岐阜に移るまでは東京に住んでいたため、とても新鮮に感じました。

小田:岐阜県のコロナの状況はいかがでしょうか。

小室先生:2020年10月1日現在では、岐阜県内での陽性患者総数は627人となっています。近隣の都市部である愛知県では5396人を数えていることから、これらを比べると岐阜県での陽性患者数は非常に少ない数字となっています。

小田:もし陽性者が出た場合は、地域や学校等では少し目立ちやすい状況なのではないかと推察しているのと、陽性者を出さないための緊張感のようなものもおありと感じています。
 コロナ禍における学校現場の歩みはいかがでしょうか。

小室先生:すべての県立学校は6月1日から分散登校を開始し、高校は6月15日から、特別支援学校は6月29日から通常授業に段階的に移行していきました。
 岐阜県の特徴の一つとしてですが、岐阜市を中心として名古屋のベッドタウンとしての機能が挙げられます。都市部との往復が感染拡大の一因となりうることについて、引き続き慎重な視点が求められますが、学生も含め地域の子どもたちが、過度な緊張感によってストレスを感じないような環境づくりも大切な視点と思います。

「コロナ世代」と呼ばれないために。

小田:大学の授業についても、今年度は異例な対応が続いていると思います。小室先生の大学においても大幅な活動制限がなされたのでしょうか。

小室先生:基本的に8月までに予定されていた行事はすべて中止になりました。例えば、長良川鉄道に乗りながら、学生と親子が一緒に工作をする親子遊びの活動を行っていたのですが、密になってしまうこと、また県外から人を呼ぶことが難しいという理由から中止になってしまいました。

小田:親子で電車に乗って、自然に満たされながら親子遊びをするという、とても贅沢な機会ですね。

小室先生:今後の行事については、規模を小さくするなど対応を変えながらようやく再開してきたところです。
 授業については、前期は他大学同様、ほとんどがオンライン授業でした。ただ岐阜県の良かったところは、対面の授業が完全に無しという状況ではなく、都市部に比べて学生が大学に集まる機会があったことです。私の授業でも前期最後の2回は、感染防止対策をしっかりと講じた上で、対面での授業を行うことができました。

小田:後期についてもオンライン授業の方向なのでしょうか。

小室先生:後期はオンラインと対面授業を組み合わせた形を予定しており、これは大学に来る人数を少なくしようという考えに基づきます。例えば、1年生が月水金に対面で授業を行う週は、2年生は火木に対面で行い、対面での授業を行わない曜日はオンラインで講義を受ける、という具合です。

小田:保育士・幼稚園教諭を目指す学生であれば、実習についても、今年は特殊な対応があったと思います。

小室先生:前期は保育実習が中止になってしまい、学内演習に切り替えました。これは、文科省や厚労省から、学内演習等で実習の単位として認定すると発表があったためです。
 後期は今のところ11月に実習を予定していますが、園にご迷惑をおかけしないこと、そして学生の身を守ることがとても大切ですので、コロナの状況を鑑み、安全に十分な配慮をしながら対応を行う予定です。

小田:コロナ禍で大学生活を送り、来年度現場に出る学生は、今までの学生とは一味違った体験を経ていると感じています。これは、「~ができなかった」というネガティブな意味合いではなく、この状況下を生き抜いた強さのようなものを個人的には期待しています。学びに励む学生と対峙される中で、これから現場に羽ばたく学生への想いはありますか。

小室先生:大学として担保しなければならないことは、今の学生たちが現場に出た時に「コロナ世代」と呼ばれないようにすることだと感じています。そのためには、現場で活躍される先生方と直接関わる機会、そして保育に関する学びは大学側が担保しなればいけません。その上で、コロナ禍での学びを積み重ねたことが今の学生の強みになるのではないかと思っています。
 おそらく、保育・教育のこれまでとこれからは大きく変わると感じています。考慮していかなければならない環境構成や、子どもたちと実際に遊びをする活動内容といったものも、今後、より深く感染症対策に配慮あるものでないといけない可能性もありますし、それに加えて、初心にかえり、今まで行ってきた活動の何が大事だったのか、もしくは、どんなことを考慮すればどのような活動ができるのか等も含めて総合的に考えられる視点もぜひ身につけてほしいと思います。コロナをネガティブに捉えるだけでなく、学びの糧に変換してほしいと願っています。

写真絵本 - SNSでの体験を学びに活かす。

小室先生:コロナ禍での大学生は、一人暮らしで生活をしなければいけないことや友達がなかなか作りにくかったことなど、学習以外でのストレスが重くのしかかっていたと感じています。その中でも私自身が驚いたことは、学生の対応力です。

小田:目の前で大人があたふたしているのも見ているはずなので、状況を飲み込んだり、新しい授業形態への適応もあったと思います。

小室先生:1つ、前期の授業で扱った「写真絵本」という題材を紹介させてください。これは、実際に自分でつくった造形物とスマートフォンを使って写真の絵本を作ろうというものです。

〈学生が制作した写真絵本〉

小田:素材や身の周りの自然環境を教材として捉える視点の他、物語としてキャラクターをどのように機能させ、展開させていくかなど、多様な学びが凝縮されている活動と感じます。

小室先生:学生の作品を見ると、白黒のフィルターを使ってみたり、構図を考え,撮影していたり、ニンジンや毛糸などをキャラクターに仕立ててみたり、立体の作品と組み合わせたりなど、今までの授業とは異なる学生なりの工夫が見られました。
 学生たちにとってはTikTokやInstagramなどのSNSはとても身近なものです。その体験を学びに応用した結果、面白い作品がたくさん出てきたことがとても嬉しかったです。こういった工夫ができるのはオンラインならではだと思います。それこそスマートフォンを造形の授業で使うことは今まであまりなく、今回初めて扱うことができました。

小田:小室先生のご指導のもと、来年、再来年と現場に羽ばたいていく学生が、ただのデジタルネイティブ世代と言われていたのとはまた1つ違うような、新しい感覚を教育にもたらしてくれることにとても希望を感じています。

小室先生:写真絵本の活動は、スマートフォンをツールにして、学生がどういった工夫をしていけるか、またその工夫を広げていくにあたっていかに保育に合った題材を結びつけることができるかと考え設定しました。つまり、元々学生たちの身近にあったスマートフォンを使って、子どもたちが読む絵本を作ってみようというところで何かおもしろい工夫ができるのではないかと思ったのです。これまで、実技を兼ねる活動は対面で行うことに意義を見出していたため、果たしてオンラインでどこまで質を担保できるのだろうかと思いながら授業を考えていたのですが、今回の写真絵本での学生たちからの好意的な言葉や反応には私自身もほっとしました。

コロナとアート、そして「つながり」

小田:せっかく小室先生とお話しさせていただける貴重な機会ですため、教育だけでなく、コロナ禍のアート活動に主軸を移したお話しも伺いたいです。
 私は音楽の世界からしか見ることができていませんが、コロナとアート(私の場合は音楽)が掛け合わされることによって、少なくとも混乱が起きたと言ってもよいのではないかと思っています。これが、ネガティブなものだったとするのか、新しい芸術の糧となったのかは、後になってみないと分かりませんが、この点、小室先生はどのようにお考えでしょうか。

小室先生:この質問はとても難しいと感じていることを先に断っておきたいのですが、シンプルな感想としては、「コロナだからアートが止まるということはない」と感じています。また「コロナ禍だからこそできるアートもある」とも思います。コロナが流行したことによってほとんどのアート系のワークショップなどが中止や延期になってしまいました。けれどもその中で、どうすれば工夫を広げることができるのだろうか、ということを考えることはできるのではないかと思います。
 一方、歌うなと言われても歌いたいと思うことは自然と感じます。絵を描いたり、何かを作ることもそうですが、アートによって生かされている私たちを感じる機会となったのではないでしょうか。きっとそれは私たちの根本的な部分ではないかなと思います。だからこそ私は美術教育に携わる人間として、今できることとは何かと常に考えなくてはいけないのではと感じています。

小田:今まで、対面が当たり前で、誰かとの親しみを表現するための1つの方法として「距離」は有効なものだったのだと改めて感じました。しかし、コロナによってそのような物理的な距離も含まれる「つながり」というものを問い直すこととなりました。先ほどの「写真絵本」の話につながりますが、そうした中で、小室先生がSNSというつながれるものを多用している学生の特性に着目したことは、面白いと思いました。

小室先生:「コロナだからつながった」という話も聞くことがあるように、コロナによって「つながり」というものの考え方は影響を受けたと感じます。さらに言えば、その中でどのようにつながっていくのか、それを考える上での1つの媒介になるのがアートではないのかなと思っています。

小田:オンラインを通した制作をすることによって何らかの「つながり」が作られているという見方もできますね。
 この点、話は尽きないのですが、今回のコロナによって得られたこうした気づきについても、子どもと学びのつながり方の多様性を考えるうえで、発展的な示唆を与えてくれるように思います。これからの教育を考えたり、具体的な教材を考えるヒントとして活用していきたいと思います。

全国の先生方へのメッセージ

小田:最後に全国の先生方へのメッセージをお願いします。

小室先生:このインタビュー記事は小学校・中学校・高等学校や幼稚園・保育園の先生など幅広い方にご覧いただいているとお伺いしました。先生方の昨年度末から続く新型コロナウイルスへの対応は本当に大変だったと思います。学校や園での感染防止策の実施や授業・活動への工夫などご自身のことよりも学校や園、そして子ども達のことを考え、過ごされてきた先生達のお話をこれまでたくさん聞きました。先生方だけではなく、保護者の方や子ども自身も不安や悩みを抱え、新型コロナウイルスと向き合ってきたかと思います。そして、今後も地域の状況を踏まえ、対応をとっていかなくてはいけません。
 まず、何よりもご自身のお身体を大事にしてください。
 新型コロナウイルスへの対応は日々、更新されてきました。感染防止策の知見を私たち自身学び続け、子ども達の成長を支えてあげるためにどのような方法があるのか、これからも一緒に考えていきましょう。

小田:小室先生、大変お忙しい最中、インタビューにお力添えをいただきありがとうございました。

話し手

小室明久先生 … 中部学院大学短期大学部幼児教育学科助教

聞き手

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

ライター

福島達朗 … NPO法人みんなのことば事務局長、部活動指導員(渋谷区, 吹奏楽)、フリーランスのステージマネージャー

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