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2020.11.06 Fri

中国の先生、子ども、教育。そしてコロナ。

元育才学校(中国:瀋陽市)日本語教師の木村崇志先生へのインタビュー。

報道で見聞きしていたのとは違う中国の姿。

小田:新型コロナウィルス感染症の世界規模での広がりをニュース等で見るにあたり、いつしか、報道越しの中国の印象が強く植え付けられていく怖さを感じるようになりました。中国に行ったこともない、親しい友人もいないのに、コロナのニュースを見るだけで中国を知ったつもりになっていることへの抵抗だったのかもしれません。
 そんな思いから、本日は中国で日本語教師をされていた木村崇志先生より、中国の子どもたちや教育現場についてお話を伺いたいと思います。木村先生、まずは自己紹介をお願いできますか。

木村:2017、18年の2年間、中国の瀋陽市というところにある育才学校にて日本語教師をしておりました木村崇志です。現在は、日本国内で、法人向けに語学研修を提供する会社に勤めています。

小田:中国にご関心をもたれたきっかけは覚えていらっしゃいますか。

木村:私が高校生1年生の時、校内での芸術鑑賞会にて中国の雑技と、伝統芸能である京劇を観る機会があったのですが、その時のダイナミックさ、華やかさに直感的に惹かれたことを覚えています。当時は中国語が分からなかったので、ただただ感動するしかなかったのですが、もし中国語が分かれば、もっと面白いだろうなとも思いました。
 また、もともと歴史に興味があり、芸術鑑賞会の直後辺りに日本人がリメイクしたものではありますが「水滸伝」(四大奇書の1つ)に熱中したことで、大学で中国語と中国史を勉強しようと決心しました。

小田:芸術鑑賞会がキャリア教育としても機能していた点、本当に素晴らしい機会だったのだと拝察します。

木村:その後は大学で中国に関する勉強をし、学部2年生の時に、大学からの補助も得て中国への短期留学をすることができました。当時、2011年は、尖閣諸島問題のために日本と中国の関係が一気に悪くなっていた時期だったため、正直不安もあったのですが、迎え入れてくれた中国人はとても親切にしてくれましたし、報道で見聞きしていた中国の様子と全く違っていたので、さらに中国について知りたいと思うようになりました。その時に親友と呼べるような中国人もできました。

小田:育才学校に着任するまでの経緯についても教えてください。

木村:これは本当に中国らしいと申しますか、「つて」です。中国は日本語教師になるためのハードルが低く、日本の大学を卒業していて、アルバイトを含む一定の社会人経験があるということが要件だったので、知り合いからの紹介を経て、着任に行きつきました。

世話焼き・競争社会・相互扶助コミュニティ・デジタルの発展。

小田:実際に中国に行かれたことでの気づきや再認識された中国の姿があればお話しいただけませんか。

木村:まず感じたのは、中国人の温かさです。他人に無関心なところもあるのですが、いったん仲良くなると、世話を焼いてくれるような世話好きなところもあるように感じています。例えば、寮のおじさんのことを思い返すと、ある日中国の歴史を勉強していることを伝えたら、翌日には家にあったであろう中国史の本を持ってきてくれたことがありました。

小田:中国という国を思い浮かべたとき、その人の多さも特徴の1つだと思いますが、その点ではいかがでしょうか。

木村:確かに、とても人数が多く、その分競争も生まれるので、チャンスがあれば掴みたいという雰囲気がある国かもしれません。これは、一族で集まって相互扶助のコミュニティを作るという中国の伝統的な文化とも関連してくると思います。

小田:実際の生活面についてはいかがでしょうか。

木村:例えば、日本よりも圧倒的にデリバリー文化が進んでいると感じました。日本におけるデリバリーサービスの広がりはコロナによって後押しされた面があったと思いますが、私が2015年頃に北京にいたときにも、すでに中国ではデリバリー文化は非常に浸透している印象を受けました。自転車の乗り捨てサービスの発祥も中国です。そういった、デジタルな部分の発展は見逃せません。

小田:SNSも非常に発展していると聞いています。

木村:例えば2014年ごろは「QQ」という、私たち日本人からすると「LINE」のようなメッセンジャーアプリが流行っていたのですが、いつの間にか主流は「we chat」という類似アプリに代わり、あっという間に「we chat」でお金の支払いができるようになっていました。こうした、移り変わりの速さもそうですが、同時に進化の速さも追いつけないほどです。良いと思ったものは何でも取り入れていく、こういった姿勢は中国の1つの姿と言えるかもしれません。

小田:世話焼き・競争社会・相互扶助コミュニティ・デジタルの発展など、なるほどと思える視点を挙げていただいたおかげで、中国のイメージが少しずつ湧いてきました。

中国の先生と子どもたち。

小田:中国における教員の地位というものはいかがでしょうか。

木村:中国では校種問わず毎年9月に「教師の日」というのがあるのですが、一般的にはこの日は生徒たちから先生に対して贈り物が渡されます。

小田:日本で言うと、「母の日」「父の日」のようなイメージでしょうか。

木村:そうですね。私も日本語教師として着任して間もないにもかかわらず、手紙をもらいました。

小田:先生のことを思って贈り物をするということが文化として存在することは、興味深いと感じます。

木村:これはあくまでも一側面ですが、こういう視点から見ると、中国での教師は、尊敬されるべき立場の人であると言えるかもしれません。

小田:中国の子どもたちはどのような印象ですか。

木村:これは私が実際に授業をする中で感じたことですが、普段は授業を聞いていないような素振りをしている生徒だとしても、気持ちは本当に純粋で、斜に構えているような子は少ない印象をもっています。純粋だからこその天真爛漫なところもあり、授業中ずっとしゃべっていてコントロールしづらいところもありますが、校庭で会ったときには「木村先生、こんにちは!」と日本語で声をかけてきてくれたり、憎めない子どもたちです。あとは、時々本当に嬉しいことをしてくれます。

小田:僕が日本で関わったことのある中国人の子に、親御さんのご都合で高校2年の時に日本に引っ越してきて、そこから日本語を勉強し始め、日本の大学に入るということで猛勉強していた子がいます。日本人ですら日本語の大学に入るための勉強は大変なのに、まず語学の壁からというのは不可能だと勝手ながら僕は思い込んでいたのですが、でもその子は本当に朝から晩までずっと勉強し続け、大学に現役合格したことを覚えています。これは極めて個別的な事例ですが、それでも中国人のバイタリティというか、エネルギーを印象付けられた出来事でした。

木村:私が中国への留学中でも、図書館の利用の面で似たようなことを感じました。留学先の図書館は、日本で経験していた図書館とは比べ物にならないくらいの広さだったにもかかわらず、どの時期も人で埋まっていて、誰もが勉強に明け暮れていました。本当に中国人は勉強熱心だと思います。これについては、見方によっては、例えば北京大学の博士を出たと言えども就職先がないというような課題によって浮き彫りになっている実力主義の背景がある種の勉学への意欲(危機感)を彷彿させているとも取れなくもないですが、ただ、結果としてこういう学校生活を経た人たちが数多く世界で活躍をしていると思うと、中国がここまで伸びてきているのはもはや当然だとも思いました。

子どもたちとの時間。そして、コロナ。

小田:木村先生が勤めていた学校について教えてもらえますか。

木村:改めて、私は2017、18年の2年間、中国の遼寧省瀋陽市(りょうねいしょうしんようし)にある育才学校にて、日本語教師をしていました。このエリアは旧満州国だったということもあり、学校の建物も、元は奉天千代田在満国民学校という、当時、満州開拓のために行っていた日本人のための学校を再利用して使っており、市の歴史文化財にも指定されています。瀋陽市の中でも、かなりトップレベルの学校です。

小田:学校の規模はどのくらいなのでしょうか。

木村:中学校1年生から高校3年生までが通っている中高一貫の学校で、非常にざっくりした計算だと「1クラス35人×8クラス×6学年+国際クラス」という感じで、教職員もあわせてだいたい2000人弱の規模です。

小田:具体的な業務や印象に残っている指導場面があれば教えてください。

木村:日本語の授業を持つほかは、学校の中での弁論大会があるので、その指導をしていました。
 印象に残っている指導場面については、少し学校の活動とは離れるのですが、中国のほとんどの地域で、日本語教師会や日本人会、大学等が主催した「日本語スピーチ大会」というのがあるのですが、瀋陽市でもこのイベントがあり、そこに向けて休み時間を使って練習をして、出場したことがありました。結果的には、入賞等ではなかったのですが、緊張しながらも今までやってきたことをしっかり発表できている生徒の姿を見て、「先生やっててよかったな」と感動しました。
 あとは、これは私が日本に帰るという時に、受け持っていた高校3年生の生徒たちが送別会を開いてくれた時の黒板に書いてくれたメッセージです。

小田:こうした画像を拝見すると、子どもたちの生き生きとした様子や、木村先生がとても愛されていたことが伝わってきます。

木村:この後、私は現地を離れたため、見聞きした話に留まりますが、2020年1月頃から学校現場にも大きな影響が出始めたとのこと。

小田:Science Portal China(中国の科学技術に関する日本最大級の日本語ポータルサイト)中、「新型コロナウイルス下での中国のオンライン教育の対応」(ライター:山谷剛史)によると、中国における休校期間中は、「停課不停学(休校でも学習は止まらない)」を掛け声として、「国家中小学網絡雲平台」や「一師一優課 一課一名師」(こちらは登録授業数が2000万強)といった地域を問わず使用できるオンライン教育コンテンツの提供をする他、テレビ局の中国教育電視台での番組配信、一部の省や市のオンライン学習プラットフォームの開放等がなされたとのこと。2月12日の通達として、これらをオンライン学習の選択肢のひとつとして勉強を続け、教師も指導する旨が中国政府教育部から発表されたようです。

木村:学校外の動きとしては、現在、現地の日本語教師会はオンラインでの実施、日本語スピーチ大会は徐々に再開していると聞いています。

全国の先生方へのメッセージ

小田:今日は、中国のことをたくさん教えていただきありがとうございました。最後に、日本全国の先生方へのメッセージをお願いします。

木村:いま、率直な感想として、中国の子どもたちにずっと授業をしているうちに、最初は少しはあったかもしれない「中国人だから」という意識は少しずつ薄れていって、そのうちに、一人の子ども、一人の人間と向き合っているように思えてきたと感じています。つまるところ、教育は人と人との交流なんだと実感することもありますし、教育を通して、今を頑張る子どもたちの姿を見せてもらえる、とも感じています。
 コロナの影響を受け、例えオンラインであったとしても、人と人とが上手に向き合って、温かい教育の姿がつなぎとめられることを願っています。

小田:木村先生、大変お忙しい最中、インタビューにお力添えをいただきありがとうございました。

補足として…
コロナ禍の中国の様子を、当事者目線で記録されたサポート記事として、以下をご紹介します。リンク掲載を承諾くださいましたDao and Crew株式会社様には心から感謝申し上げます。なお、以下に掲載されている内容は、執筆された方個人の意見に留まる内容です。

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話し手

木村崇志先生 … 元育才学校(中国:瀋陽市)日本語教師。

聞き手/ライター

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

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