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2021.01.08 Fri

働き方改革と向き合うことで「幸せ」を見つけ直す。

石川県の小学校にお勤めのたのけん先生へのインタビュー。5年生担任の中堅先生。

質問・反論ができるようになる環境づくり

小田:みなさま、ついに2021年がやってきました。連日のコロナの陽性者数報告を見る限り、予断を許さない状況ではありますが、どうかお身体を第一に、豊かな一年をお過ごしくださることを心から願っております。
 2021年最初にご紹介させていただくのは、石川県の小学校にお勤めのたのけん先生です。まずは自己紹介をお願いいたします。

たのけん先生:石川県の小学校に勤務しています。教員10年目で、この数年は5、6年生を担任することが多いです。現在は5年生の担任をしています。

小田:僭越ながらも私はFacebookでたのけん先生のご活動をお見かけし、さらにたのけん先生が制作されているホームページ「小学校 社会ノマド」を拝見したことで、一気に先生のご活動に関心をもつこととなりました。
 たのけん先生の学級づくりや授業づくりの考え方は、子どもたちが主体的に関わりあい、活動に参加していくことが柱になっていると思いますが、その中でも特に子どもたちが議論し合えるような環境づくりに力をいれていらっしゃる印象を覚えています。子どもたちはいきなり議論ができるようになるわけでなく、段階的に子どもたちを導いていくことが大切だと思います。この点、たのけん先生の実践も含めてご紹介頂けますでしょうか。

たのけん先生:他の都道府県の状況は分かりかねますが、石川県の小学校ではよく、「共感的に話を聞く」ということの大切さが言われていたり、「共感」をベースにした話型を学校で統一して実践している学校が多いように感じます。ただ、大切なのは「共感的に話を聞く」姿勢だけではないと私は考えています。それは、例えば共感的に話を聞くだけならば、その内容が分かっていなくても「分かりました」と言うことができてしまうからです。
 実際、石川県の子どもたちは、誰かが授業中に発表した後は「わかりました。」と反応するように低学年から指導されています。だから、そうやって育ってきた子どもたちはたとえ高学年のクラスであっても誰かが何かを発表するととにかく「わかりました。」と反応します。そのため、そこで私が「何がわかったの?」と問い返してみたりすると、「ん!?」と全員が引っ込んでしまいます。ひどい場合だと、「今の〇〇さんの話をもう一度繰り返してくれる?」と聞くと、「…わからない。」となるのです。「わかりました」と反応した直後なのに…です。実際、聞いていないんですよね。聞いてなくても「わかりました」と反応さえすれば褒めてもらえるので、子どもたちの意識は、「この人は何を話しているのか」ということではなくて、「この話が終わったら『わかりました』を言えばいい」という意識になってしまっているんですよね。
 そうした「表面的な反応をすること」ではなくて、「自分でちゃんと消化しながら人の話を聞く」子にするためにはどうすれば良いのかということを考えた時、質問や反論をする力をつけることが大切だと考えるようになりました。
 実際、子どもたちが大きくなってから世の中に出たときに必要となってくるのも、このような力だと考えています。

小田:社会に出た時、共感的に話を聞くこと、一般に傾聴力の大切さも言われていますが、確かに傾聴力だけでは不十分で、テーマに対して自分なりの意見を持ち、相手にしっかりと自分の考えを伝え、時には議論を交わして共に1つの納得解(最適解)を探していくことも強く求められます。
 しかし、1年生のときから「共感的に話を聞く」ということを教えられてきた子どもたちに対し、そうした価値観を提案していくことは混乱を招かなかったのでしょうか。

たのけん先生:そうですね。最初は戸惑う子どもたちもいます。むしろ、戸惑う子どもたちの方が圧倒的に多いかもしれません。でも、毎年、4月に最初数日間、“共感的”な状態で授業を行った後、こんな話をします。受け持った子どもたちに対し、例えばあなたが社長だったとして、会議をしているときに、どんな提案に対しても「そうですね、そうですね。それは良いですね。」ととにかく言う入社希望者と、「今の話はここがこういう危険性があるので、こうした方が良いのではないか。」と反論したり、「今のここの部分はどういうことですか?」と質問したりする入社希望者、どっちを採用するかという話をしたとき、だいたいの子どもたちは後者を選びます。そこで、「でも、今の君たちは前者だよ」と伝えると、確かにそうだと今の自分たちの姿に気づいてくれます。
 そこで、「大人になるまでに、このような“質問”や“反論”ができるように力を付けてこう!そのために、授業中は『わかりました』は言わなくていいから、その代わりに友達の話を聞きながら『ん!?』と思うところを探してみよう。」と話します。そうすると、その日から子どもたちの授業中の目が変わります。みんな「質問しよう!」とか「反論してやろう!」と躍起になるのです。だから、私自身も授業では子どもたちが本気で考えたくなるような授業を作るために、特に導入部分にこだわって授業デザインをすることを心掛けています。
 とは言え、こうして始まった1学期での前半は、正直、かなり的外れな質問や「そこ!?」と思わず突っ込みたくなる反論がほとんどです。ただこの段階では、内容はともかく、ひとまずは質問や反論の形ができていたらとにかく褒めることにしています。
 さらに進んで、1学期の終わりか2学期に入ったころになると、子どもたちが少しずつ質問や反論を当たり前にできるようになってきます。その段階までなると、次は質問・反論の質の部分に褒める視点を切り替えていきます。授業のねらいや課題の本質に迫るような質問や反論ができたときには、何が良かったのかをきちんと伝え、褒めると、子どもたちも段々とピントが合ってきます。
 こうして2学期の終わりくらいになってくると、ほとんどの子がまともな質問・反論ができるようになってきます。

小田:段階的でとても分かりやすいです。子どもたちも最初は勇気が必要だった質問・反論も、先生が褒めてくれたり仲間が支えてくれたりすることで、確かな自信に変わっていったことと思います。
 ただ、話が戻るようで恐縮なのですが、「共感的に話を聞く」ということが石川県では大切にされている考え方とのこと。たのけん先生のお考えは決してこの考えと相反するものではなく、むしろ一歩先を捉えていると解釈していますが、ただ現場ではすんなりと受け入れてもらえたのでしょうか。

たのけん先生:正直、最初の頃は「それは“たのけん先生のやり方”だよね」とか「変わったことしているね」など、はっきりと否定されることこそありませんでしたが、なかなか理解をしてもらえませんでした。ただ、研究授業の事前研などの機会にそのことを説明させてもらったり、実際に授業を見てもらうことを通して、徐々に同じ学年団の先生や他の先生も理解を示してくれるようになり、質問や反論の要素を取り入れてくれるようになりました。そして、本当に興味を持ってくれた先生は「どうやってるの?」質問してくれたりして、私のクラスの指サインを導入してくれるようにもなりました。

小田:たのけん先生の信念と、子どもたちの育ちを建設的かつ温かく見守るご指導が、他の先生の意識の変化へと影響したのではないかと思います。

これから先、子どもたちが新しい時代を生き抜くために必要な力

小田:もう1点、たのけん先生のHPを拝見していて、トライ&エラーの大切さもメッセージとしておありだったのではないかと受け止めています。トライ&エラーとは、成功することが第一の目的として見えがちですが、エラー(失敗)によって広がる豊かな文脈の学びには見過ごせないものがあります。つまりは失敗も学びの資源として捉えていくことの有用性があるのではないかと感じています。

たのけん先生:最近の子どもたちは、成功しても恥ずかしさからその嬉しさを素直に表出できない子もいます。また、子どもたちが失敗をしたときには悔しいと思う気持ちをもつことを大切にしてほしいとも思っています。そうした意味で、例えば、テストを返す時でも、100点取れた子には「100点や!」とみんなにもわかるようにあえて言いますし、同じように80点に届かなかった子には「残念やったな」とか「がんばれよ」と言うと、悔しいと思ってくれるので、その悔しさを次につなげていこうと促します。また、忘れ物など、失敗してもそれについて叱ることはせず、失敗した後の行動を評価するようにしています。成功や失敗を通して得た気持ちや経験を次の学びにつなげていく、ということを大切にしたいと考えています。

小田:今お話しに挙がった子どもたちの例でいう、自尊心や最後まで粘り強く頑張りぬく力などは今では非認知能力と言われその育み方については注目を集めていますが、たのけん先生のご指導のスタイルはそうした非認知的な側面の育みを重視しているように感じます。
 正しい知識をどれだけ蓄積し、再現できるかという力よりも、シンギュラリティやAI時代など、今の子どもたちが大人になった時に直面するであろう新しい文脈の中でいかに生き抜くことができるのか、そうしたときに必要な力はなにか、と問われた結果、質問や反論、ならびにトライ&エラー(そこに潜在する非認知的な側面)がポイントになったのではないかとも感じています。

たのけん先生:「言われたことができる」ということは当然のこととして、それに加えて自分で考えたことを、自分の言葉で、相手にしっかりと伝えることが今まで以上に大切になってくると個人的には考えています。それは、これからAI時代と言われていますが、それよりも先に外国人労働力の積極的採用が起こりうるのではないかと考えています。つまり、言葉を介さない単純労働の部分は外国人労働力に取られるようになると考えています。だからこそ、日本人である私たちが、自分たちの言葉で、しっかりと自分の意見を伝えていくことの価値がますます高まってくると考えています。

新しいツールを働き方改革の入口に。

小田:話題は一転しますが、GIGAスクールもいよいよ目前に迫ってきました。たのけん先生の学校でも準備は進められているのでしょうか。

たのけん先生:校内のインターネット設備はつい先日完了して、あとはいつタブレットと大型モニターが来るのかというところです。

小田:GIGAスクールについては個人的にはまだまだ未知なのですが、たのけん先生の感触として、GIGAスクールがスタートすることによって、これまでの教育の考え方が大きく変わるのか、それとも方法論が変わるだけなのかなど、イメージを教えていただけますか。

たのけん先生:子どもたちとの関わり方や教育を通して伝えたいメッセージは基本的には変わらないと思っていますが、例えばアンケートを取るなどの単純作業は楽になっていくのではないかと思います。ただ、先日わかったことなのですが、現段階で予定しているシステムだと、画像データの共有はできるが、リアルタイムで作業中の画面を共有したり、全員分の画面を共有したりすることができず、また、全員分の画面をリアルタイムに教師用端末でチェックすることができないようで、私がかねてから想定していたのとは異なる仕様のようです。だから現在予定されているシステムだと、授業中に積極的に端末を活用して…というのは難しいと心配しています。そのため私はそのようなことができるように要望を直接出していて、協議してみるとの回答を頂いているので、そのような機能が将来的に入ってくることを期待しています。

小田:私は機械が苦手なので、もし自分が教員だった場合を想定すると、GIGAスクールには不安しかないのですが、ただたのけん先生のご指摘のように、使いようによっては単純作業が楽になる可能性は大いにあると感じています。
 今回、たのけん先生にインタビューをお願いするきっかけとなったのが、たのけん先生がHPでご紹介されていたバーコードを用いた宿題の管理システムだったのでした(「教師の働き方改革:宿題チェックにバーコードを導入!」。従来の方法に固執するのではなく、新しいツールを活用することで教員の働き方を見直すという意味ではGIGAスクールとも親和性が高いと感じています。このバーコードを用いた取り組みについて教えていただけますでしょうか。

たのけん先生:まず、なぜバーコードを用いて管理を始めようかと思ったかというと、それまでは宿題提出のチェック係を児童にさせていたのですが、時間がかかり、またチェックした紙の管理に手間がかかり、さらにその内容を集計・管理し、数値として保護者として示すなどの活用がしきれずにいました。そうして悩んでいる時に、元々Excelが得意だったこともあり、バーコードリーダーを用いた管理システムを思いつきました。また、せっかくこのシステムを作るのであれば他の人にも使いやすいものをつくりたいと思い、完成したものをHP上で公開することにしました。
 実際に使ってみるとやはり便利だなというのが素直な感想です。また、バーコードでの読み取りは子どもたち自身にさせており、子どもたちはバーコードリーダーでピッと自分で宿題を読み取ることに興味があるようで、その結果、宿題の提出率も上がりました。これは完全に想定外のメリットでした。また提出率もパーセンテージで出せるようになったので、宿題が出せていない子には数値を見せて話をしてやる気を出させることもできています。

小田:記事中では、エクセルのデータが無料でダウンロードできるようになっており、また何を準備すればよいのかも丁寧に書かれてあるので、記事の通りに進めるだけで導入はばっちりですね。

たのけん先生:もしお試しくださる場合は、バーコードリーダーはお求め頂く必要があるのですが、記事中で紹介しているバーコードリーダーは私も使用してみてきちんと使えたため、実証済みという意味でおすすめです。また、おすすめしたバーコードリーダーは有線モードも無線モードも使えるのですが、意外と無線モードが使いやすいです。

教員の働き方改革とは仕事を減らすことなのか?

小田:「教員の働き方改革」という言葉は、GIGAスクールや新型コロナウィルスの影響からも、日に日に重みを増しているように感じています。たのけん先生から見て、これから必要な教員の働き方改革について教えていただけますか。

たのけん先生:私は以前にサモア(Samoa)に行ったことで大きく価値観が変わりました。それまではいかにも日本人らしい、勤勉に働くことがいいことなのかなと思っていたのですが、サモアで生活したり、ホストファミリーのサモア人と話していく中で、「なぜ仕事をするのか」という問いと向き合った時、「自分が“幸せ”になるために仕事をするべきなんだ」ということに気が付きました。それから自分自身の働き方も変わってきました。
 今の日本の教員は、朝早くから夜遅くまで、長い時間働いている人が「よく働く」と評価されているようにうっすらと感じています。でも、私は時間の長さではなくて、生産性の高さが大事だと思っています。しかし、仕事の生産性を上げるためには経験だけではなく、勉強も必要です。具体例を挙げるとすると、例えば、Excelの勉強をしておけば、他の人が30分かかる仕事も1分で終わらせることができますよね。何となく現代は、「働き方改革」という旗を上げて、仕事の量を減らすことばかりを意識しているように感じますが、それだけではなく、勉強をして自分自身の能力を上げていく必要もあるのではないでしょうか。勉強すればするほど仕事が減っていくと思っています。

小田:正直、新しい視点のように感じました。今まで教員の働き方改革と考えると、仕事の量を減らすことばかりに意識がいっていましたが、「教員自身の能力を上げて仕事の効率を良くしていく」という視点は個人的に不足していたと反省しました。
 ちなみにたのけん先生は、ご自分が今まで仕事の効率を上げるために勉強してきた中で、やってよかったことはありますか。

たのけん先生:Excelが一番です。あとはショートカットキーなども便利です。
 私は、我が子をよく図書館に連れて行くのですが、その時は必ずExcel関連の本を1冊は借りるようにしています。全部読むようなことはしないのですが、パラパラめくっていくと、その時自分が求めている知識にふと目が留まったりすることがあります。これは無意識に自分の能力を上げていく方法で、逆にこういう知識が欲しいと目的が明確な時はGoogleなどで検索してみたり、YouTubeを見たりもしています。

小田:成績付けも、IF関数を使えば打ち込みと同時に結果が表示されますね。

たのけん先生:例えば50m走の記録やプールの記録、国語や社会のノートや成果物の評価などを記録するとき、他の先生は名簿やノートなどに記録は付けて、いざ成績を付けるという時期になった時にその記録を引っ張り出して、半日かけて成績を考えて…ということをしているのですが、私の場合は、それぞれ入力したらその点数や記録に応じて自動的にA~Cの成績がつくようなExcelファイルを作り、活用をしています。そうすることで、成績を付けるという時期になっても、コピー&ペーストをするだけなので、10秒もかからない仕事になっています。

小田:素晴らしいです。壁は高いのかもしれませんが、Excelってやっぱり便利です。

全国の先生方へのメッセージ

小田:最後に、全国の先生方へ一言メッセージをお願いします。

たのけん先生:子どもたちのために一生懸命頑張る先生も大事だと思いますが、それよりも大事なのは「教師自身が幸せになること」なのだと思っています。「幸せ」な人でないと、他の人を「幸せ」にすることはできないと思っているからです。ただし、それは仕事で手を抜いて楽をするという意味ではありません。きちんと子どものためにやることはやる。そのために使えるものはどんどん使う。でも、自分の能力を上げる時間もつくることで、同じ結果をより短い時間で生み出すことができるようになります。その浮いた時間を自分のために使う。そうすることで教師自身の「ゆとり」もできるし、勉強して身に付けたスキルは自分の財産にもなります。そうして自分の幸せについても考えることが、幸せな子どもを育てるためには大事なのではないかと思っています。
 また、私が立ち上げている「社会ノマド」のホームページでは、私の行った社会科の実践を公開しています。板書やワークシートの使用タイミングなど、いずれも細かく明記することで、誰でも授業しやすいよう心がけています。こうしたサイトを上手く活用いただくことで教材研究なども0スタートではなく、ある程度の段階から行うことができます。
 色々なものを活用して、できるだけ自分の時間を大切にして、自分らしい働き方を考えてほしいと思います。

小田:たのけん先生、今日はありがとうございました。

話し手

たのけん先生 … 石川県の小学校教諭、5年生担任。
HP:社会ノマド

聞き手/ライター

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

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