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2020.07.03 Fri

密を避けた新しい合唱部、そして避難訓練。

熊本県の中学校にお勤めの若手先生(T先生)へのインタビュー。

緊急事態でも子どもたちへの想いは欠かさない。

小田:インタビューも4回目を迎えました。今日は熊本県の中学校教諭、T先生にお話を伺ってまいります。はじめに、どの先生にもお伺いしていることですが、コロナによる休校が発表された当時のことを教えてもらえますか。

T先生:私は2019年度に今の学校に着任して3年生の担任をすることになったのですが、他のクラスの担任の先生が1年生のときからの持ち上がりだったこともあり、子どもたちと過ごした時間に差があることを感じていました。そのため、この1年間、子どもたちと一緒に過ごす時間をとても大切にしたいと思い、卒業式を見据えた授業や行事の活用など、年間を通しての計画を丁寧に組んでいたところに、突然の休校を迎えることとなりました。

小田:一日一日を大切にお過ごしだった分、残酷な現実だったように思います。

T先生:休校のニュースは、いつも通りの部活後の職員室で見たのですが、先生方みんなで衝撃を受けたのを覚えています。その翌日には1時間目を全学年自習にして、職員会議を行い、2時間目には生徒に伝えるという流れでした。

小田:子どもたちと一緒に過ごせる時間もあと数週間というときでしょうか。

T先生:涙ながらに「もう、今までのようにみんな一緒に授業を受けることはないんだよ」と伝えました。そうして休校期間に突入しました。休校期間中は卒業式の実施に関する検討を行う他、2月末の休校前最後の登校日では入試の事前指導を急遽実施、教室掲示を全てはがし返却、という対応を行いました。

小田:どたばたの中でも、堅実な対応が続いた印象をもちます。

T先生:いまこうして振り返ると、よくぞ「柔軟に、敏感に、素早く」対応できたと、教員同士の連携の素晴らしさを感じています。緊急事態にもかかわらず、あんなにも力を合わせて対応ができたこと、そして子どもたちへの想いも欠けることなく対応できたことは良かったです。

新1年生を支える工夫

小田:T先生の学校では、6月から一斉登校が開始しているのでしょうか。

T先生:はい。もう少し細かく説明すると、6月の1週目は午前授業と給食のみで、2週目から通常通りになりました。

小田:今年も担任を持たれているのでしょうか。子どもたちの様子も教えてほしいです。

T先生:1年生の担任となりました。本来であれば6月というのは、入学してから2か月、部活が開始してから1か月が経ち、体育大会も終えて、中学校に慣れてくる時期でなければいけないのですが、今年の1年生についてはまさに中学校生活が始まったばかりなので、まだ中学生になりきれていないと感じています。それでも中学校の授業についていこうと努力しつつ、しかし授業のスピードは例年よりも早くなっているので、あたふたしているような印象でしょうか。

小田:学校として、新1年生が学校に慣れることをサポートできるような取り組みはされていたのでしょうか。

T先生:今年の1年生は入学式もできていないので、1年生の授業に関わる教員全員の自己紹介ビデオを作り、5月の臨時登校日にクラスごとに視聴する、ということをしました。これは、本来であれば入学式や学年集会でやるべき内容の代替案でした。その他、私の学校では「対面式」という各委員会や部活動の説明をするイベントがあるのですが、これもZoomで行いました。方法としては、体育館に撮影ブースを設け、そこで各委員長や部長が代わる代わる撮影を行い、その様子が各教室に放映されるというものです。

小田:新しい技術も活用した素晴らしい取り組みだと感じます。

T先生:熊本市は、昨年の秋ごろ、教員には一人1台、子どもたちにも3人に1台、タブレットが支給されています。コロナ前のことだったので、タイミングが良かったです。

合唱部の新スタイルと代替イベント

小田:T先生は合唱部の顧問と伺っておりますが、部活動もすでに再開しているのでしょうか。

T先生:6月の2週目から活動を再開し、今は新入部員も含めて35人ほどが音楽室で活動をしています。

小田:35人!35人が音楽室で歌唱活動をするとなると、個人間の間隔の確保等、3密対策が難しい印象をもちますが、どのような工夫をされているのでしょうか。

T先生:再開直後は、常に音楽室の窓は開けた状態で、こまめに手洗い・うがいも行い、マスク着用の状態でハミングでの歌唱を行っていました。その後、徐々にではありますが、2メートルの間隔が確保できている時に限り、マスクを外した歌唱も取り入れるようにしました。

小田:きっと、コロナ以前は子どもたち同士がペアになった活動等も行っていたと思うのですが。

T先生:ペアの子の手のひらに息を当てたりするような呼吸の練習や、姿勢の確認をしあうような活動はできなくなったので、部員全員で円を作り、壁の方を向いた状態で呼吸の練習をする方法に切り替えました。

小田:部活再開から数週間が経ち、少しずつ、子どもたちも新しいスタイルでの合唱部に慣れてきたのだと思いますが、お困りごともあるのでしょうか。

T先生:今は2・3年生にとっても数か月ぶりの部活で、これまで積み上げてきたものを再構築したり、1年生には基礎をしっかり伝えていきたいと思っているのですが、今後の本番のことを思うと、しっかりと整列して歌唱するということも指導していかなければいけないと考えています。ただ、ではその際も2メートルを確保する必要があるのか、もしその場合、1年生は安心して歌えるのか、ということが気になっています。通常の練習時も、本来であれば1年生のそばに上級生にいてもらい、1年生は上級生の声を聴きながら歌う、上級生は1年生の声を聴いてアドバイスをしてあげる、という活動ができなくなったことについても代替案のイメージがまだできていません。

小田:いま、本番のことに触れられていたと思うのですが、今年度はNHK全国学校音楽コンクールや全日本合唱連盟と各都道府県の合唱連盟が主催するコンクールの中止が相次いだ一方で、熊本県合唱連盟は8月1日に、コンクール中止に伴う代替イベントを実施すると聞き、驚いています。合唱に関するイベント中止が続くなか、このような代替イベントというのは部活指導をされるうえで励みになるのでしょうか。

T先生:非常に励みになります。熊本県合唱連盟が発表した代替イベントがあるおかげで、この日に向けて部員一同頑張ることができますし、3年生は引退を迎えることができます。

小田:このイベントによって、子どもたちが切磋琢磨し、作品や仲間と向き合える時間が積み重なることを心から願っています。

T先生:私は、中学3年生のときに、合唱部のコンクールでNHKホールに行った経験が、今の職につながったのだと感じています。「コンクールだけじゃない」という意見もある中で、やはり中学生にとってはとても大きな問題なのだと感じています。このイベントのおかげで、私も子どもたちに「これに向けて頑張ろう」と言えたのは大きかったです。

いつ起こるか分からないからこそ、密を避けて避難訓練

小田:熊本県といえば、2016年に起きた熊本地震の印象が強く残っているのですが、活動制限の中、避難訓練はどのように取り組まれるのでしょうか。

T先生:休校期間中に、休校が明けたら避難訓練をすることは決まったのですが、どのように実施するのかについてはいくつか意見がありました。例えば、例年通りの避難訓練を実施する場合、とても密な状況が予測されるため、偶数クラスと奇数クラスに分け、偶数クラスから先に避難しようという案もあったのですが、「もし、明日地震が起きたとき、本当に偶数クラスだけを先に避難させるのか?」という問いがあったりと、地震に対する危機感が高い県民性だからこその現実的な視点を出し合いながら検討を重ねました。

小田:1年生にとっては学校への慣れも考慮する必要がありそうですね。

T先生:避難訓練は無事に数週間前に実施ができたのですが、そのときは、1年生にとっては初めての中学校で、避難経路も分かっていない状況。3年生も教室の場所が変わり、新しい環境での避難は未経験でした。結果、今回はマスクの着用をし、私語厳禁で、本当に起きたことを想定して学年ごとの実施となりました。地震はいつ起きるか分かりません。密への対策を行いつつも、早々に避難訓練ができたことは良かったです。

全国の先生方が元気になる発信への期待

小田:このインタビューはきっと、全国の先生方のみならず、企業の方や大学の先生等もご覧くださっていると思います。今後の教育活動の質を高めていくために、社会に投げかけたいことはありますか。

T先生:今回のコロナによる一連の対応では急を要することが多く、それでも全国の先生方は各現場での速やかな対応ができたことを、私は本当にすごいと感じています。その柔軟性や危機管理能力など、やっぱり教員ってすごいと思いました。ストレスがかかることの多いこの状況だからこそ、頑張っていたり、活躍したりしている先生の姿を、メディア等でたくさん紹介してもらえたらうれしいです。

小田:音楽科としての視点ではいかがでしょうか。

T先生:合唱部では昨年度、2月29日の休校前最後の部活動時に急遽CDを作り、保護者の方にプレゼントしたところ、とても喜んでいただくことができ、合唱部の立ち上げに力を貸してくださった校長先生にもCDをお送りしたところ、「今でも聴いてるよ」と嬉しい言葉をもらいました。芸術は必ず心の癒しになると思うので、リモート演奏だけに偏らない検討に期待したいです。

全国の先生方へのメッセージ

小田:最後に、全国の先生方にメッセージがあればお願いします。

T先生:ありがたいことに、私は東京の大学に通っていたので、いま、福島や長野、愛知などの全国の先生方と連絡を取れていることに助かっています。これからも、全国の先生方の意見を聞きながら授業を重ねていきたいと思っています。

小田:T先生、大変お忙しい最中、インタビューにお力添えをいただきありがとうございました。

話し手

T先生 … 熊本県にて中学校教諭。合唱部顧問。

聞き手/ライター

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

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