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2020.11.20 Fri

セルフマネージメントあっての私らしい教員ライフ。自分に素直に生きる。

東京都内の小学校にお勤めの中堅先生(O先生)へのインタビュー。

休校期間中は教員の出勤ローテーションを工夫。

小田:今日は東京都内の小学校にお勤めの中堅先生、O先生にお話しを伺ってまいります。まずは、O先生の学校の今年度のあゆみについて、教えてください。

O先生:今年度は、当初の予定通り、4月6日に始業式と入学式をするところから始まりましたが、コロナ対策として、入学式は外で行いました。そこからは休校期間に入ったのですが、課題等の問い合わせがあったときに対応できるよう、全教員を4分割し、Aチーム、Bチーム、Cチーム、Dチームを作って、ローテーション勤務となりました。Aチームから罹患者が出た場合はローテーションから外す、という具合です。

小田:もし罹患者が出たとしても、迅速な対応ができる分かりやすい仕組みですね。

O先生:チームの組み方について、最初は「各学年+専科」としていましたが、休校期間の延長がなされたことから、さすがに学年団での打ち合わせができない日が続くことが課題として挙がり、延長された休校期間分については、Aチームが1年と3年等と、学年団の先生が集まれるようなチームに組み直しました。

小田:その後、6月から開始された分散登校の方法にも工夫があったとのこと。

O先生:分散登校にもいくつかの段階を設定しましたが、その最も初段階としては、午前中の時間を3つに分け、各クラスも3分割し、さらに登校する学年を限定するものでした。例えば、1年生と2年生と5年生の出席番号1番~10番の児童が最初の時間、11番~20番の児童がその次の時間、21番~30番の児童が最後の時間に登校するというものです。
 次の段階では、各クラスは3分割だったものを2分割にし、学校で授業を受ける時間も増やし、児童の入れ替えのタイミングは給食を基点にしました。ただ、給食時に前半と後半の児童が集まってしまうと密が予測されるため、前半の児童が給食を食べ終わると、すぐに下校をさせ、教員は急いで消毒作業をし、後半の児童は給食を食べるところから始まる、という流れでした。

小田:教員は1日に2回給食の時間があったということですか…。また、もちろん後半の児童が少し早めに学校に来ることもあったと思いますので、どこかで待機してもらうよう、目配りにも苦労があったと思います。

O先生:その後、段階的に一斉に登校する児童数が増え、最終的に全児童が同じ時間に登校できるようになりました。

小田:去年、突然発表された休校に伴い、卒業式はどうするのかと全国的に騒がれていたのが記憶に新しいのですが、今年度の卒業式について、O先生の学校ではおおよその方向性は決まっているのでしょうか。

O先生:翌3月の卒業式に5年生が参加できるのか、歌唱が可能なのかどうかについては近隣の学校の状況も踏まえて最終決定をする、というのが現時点での回答になります。ただ、学年で集まってのリハーサル等は1回までしかできないことになっているので、例年の卒業式では5年生が入退場曲の演奏をしていたのですが、今年度は難しいと思い、その点についてはすでに6年生の担任とも打ち合わせをしています。

代替イベントは創造的なマインドで。

小田:今年度、できなくなった行事等も多くあると思います。代替イベント等の検討はあったのでしょうか。

O先生:例えば、移動教室(修学旅行)の実施ができなくなったので、それについては「オリジナル移動教室を作ろう!」という内容を、総合の時間に位置付けて実施しました。
 数時間かけて、子どもたちはキャンプファイヤーを準備したり(段ボールで組木を模して作り、その内側に赤いすずらんテープをつけて作った手作りのもの)、マイム・マイム(フォークダンス)も各クラスで練習して、授業時間でいう3・4時間目をイベントにあて、その時は体育館の暗幕も全て閉じて、本当に真っ暗の中でキャンプファイヤーが浮かび上がるようにして行いました。

小田:運動会についてはいかがでしょう。

O先生:名称を「体育発表会」と改め、各学年、徒競走とダンスの2種目のみを行いました。また、密を避ける目的で、体育発表会は2日に分けて実施し、1日目が児童鑑賞日、2日目を保護者鑑賞日としました。

小田:保護者鑑賞日についても、保護者の入れ替え等、工夫が必要だったように思います。

O先生:そこは体育主任が「3部制」を提案し、第1部が1年と4年、第2部が2年と5年、第3部が3年と6年とすることで、保護者の方は子どもが出場する部についてのみ鑑賞できるというようにしました。
 各部の流れは、例えば第1部だと、1年生がダンスをし、4年生がダンスをする、続いて1年生が徒競走をし、4年生が徒競走をする、というような流れでした。

小田:体育発表会は10月下旬に終わったばかりと伺いました。1つ1つ、アイデアと教員同士の連携で乗り越えられていることを感じます。

O先生:その他、社会科見学は、日程は動かしたもののありがたいことに行先はほとんど変更せずに済みました。例えば、6年生は浅草と江戸東京博物館、5年生は葛西臨海公園と工場見学など。

小田:ここでは紹介しきれませんでしたが、展覧会の実施方法も大幅に変更され、学校全体に作品を掲示するスタイルを採用されたとのこと。新しいことへの戸惑いがこれからも続いていくことと思いますが、「創造的なマインドで現状と向き合うこと」、「教員の負担を無視しないこと」、「教員同士の連携の力」がこれからも引き続き求められる姿勢なのだと勉強になります。

つらさは真面目さの裏返し?

小田:さて、O先生についてはとても明るく、はきはきされた印象をもっているのですが、このコロナ禍において、「疲れ」のようなものもあるのでしょうか。

O先生:疲れかどうかは分かりませんが、教員になりたての頃から定期購読している教育雑誌があるのですが、そこでは今年度、コロナ対策の特集が掲載されており、最初はきちんと読んでいたのですが、次第に読むのがつらくなってきた、ということがありました。

小田:理由は…。

O先生:雑誌で紹介されている全国の先生は、こうしたコロナの中でも前向きに頑張っていこうという「キラキラした先生」が多く、そういった先生方の取り組みを拝見し続けるうちに、そんな風に頑張り切れていない自分に不甲斐なさを感じるようになっていきました。だからこそ読めば読むほどつらさを感じるようになりました。

小田:なるほど…。確かに雑誌等でご紹介されている先生方はキラキラしているイメージがありますね。

O先生:それこそ、5月頃は、有名な先生の取り組みを教員仲間とメールで共有したりしていて、前向きに情報と向き合えていたのですが、いつの間にか気持ちが変わっていました。

小田:私見ながら、O先生は雑誌の向こう側にいる先生を全くの他者とせず、自身の教育技術向上のための比較対象とされているようにも感じました。その点からは、O先生の真面目さを強く感じます。

セルフマネージメントは自然と触れ合うこと。

小田:今年ももう11月下旬。これから、あっという間にクリスマスが来て、新年が来て、卒業式がやってくると思います。新年度は学習用端末の活用も始まることから、全国的に、これから先も未知の対応が連続することが予測されます。そこで伺いたいのが、O先生が取り組まれているセルフマネージメントについてです。

O先生:私にとってのセルフマネージメントは旅行です。コロナになってからは、人が多く集まる場所や、泊りがけでの旅行はできなくなりましたが、それでも時間があれば、十分な感染症対策を行ったうえで「一人旅」をしています。

小田:なんでも島に行くのがお好きとか。

O先生:御蔵島にはこれまでにも行ったことがありますし、また訪れたい島です。本当に美しい自然と、非日常的な時間を味わうことができます。

小田:御蔵島へは、船やヘリコプターで行くことができると思いますが、例えば船だと、東京竹芝桟橋から7時間30分程度で到着のようです。ゆっくり時間をかけて海を越えるということにわくわくします。

O先生:御蔵島に限らず、コロナの影響で島への出入りは厳しくなりました。ただ、御蔵島には実は「桟橋カメラ」が設置されており、そのカメラの映像(画像と動画)は、「御蔵島桟橋カメラ」で見ることができるので、疲れた時、ネット越しに島の様子を眺めることもあります。夕方は特にきれいですよ。

小田:Google Earthを使って、御蔵島を歩いてみる?のも良いですよね。

O先生:また、北鎌倉も人が少なく、美しい自然と歴史に触れあうことができました。こうした一人旅は、私にとってはとても大切な時間で、セルフマネージメントになっていると思います。

全国の先生方へのメッセージ

小田:最後に全国の先生方へメッセージをお願いします。

O先生:いま、学校現場は「例年通り」が立ち行かない状況です。だからこそ、「いつもと同じことができないのが当たり前」という視点に立って物事を考えることが、精神的負荷を下げる1つのヒントなのだとも思います。「こんなときだからこそ、無理をせず、自分に素直に生きましょう」。

小田:O先生、本日はありがとうございました。

話し手

O先生 … 東京都内の小学校でお勤めの中堅先生。

聞き手/ライター

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

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